Audi 50はNSU統合後のAudiが小型車カテゴリ、すなわち"Kleinwagen"クラスに初めて投入したモデルです。発表は1974年9月。少し遅れて1975年3月に発表された初代VW Poloと実質兄弟車であることはあまりにも有名ですが、初代Passatとおなじくオリジナルはこちら。初代Poloは初代Golfと似ているため、これもまたGiorgio Giugiaroの仕事だと勘違いされているかたが多いのですが、スタイリングはNSUのClaus Lutheが担当しています。

Audi 50と初代VW Poloの関係は、近年のAudi A3とVW Golfのそれになぞらえられることが多いのですが、「ブランドとしての差別化」の発想はいまほど明確でなく、搭載エンジン出力に差がつけられている(Audi 50が37kW/50PSか44kW/60PSの1,093ccなのに対し、VW Poloは29kW/40PSの895cc)ことと、フロントグリルのエンブレムが異なっている以外はまったくの同型車(あるいはバッジエンジニアリング車)と呼んで差し支えありませんでした。後にPoloでも大出力のエンジンが選択可能になったことにより、50は身内であるVW Poloに駆逐されてしまい、当初Audi車として出される予定であった2ドアセダンのバリエーションはVW Derbyとなり、1979年モデルをもって50はラインアップから消滅することになります。

さて、I.M.U.製の1:87スケールAudi 50ですが。I.M.U.でははじめからひとつの型でAudi 50とVW Poloの2車種を作ることを想定していたようで、車台側のモールドにはあらかじめふたつの車名が併記されています。パーツとして明らかに異なるのは実車同様フロントグリルのエンブレムのみ。なお、Audi 50ではバンパーがボディと同色にされていたりしますが、この時代にはまだ「バンパーボディ同色」なる概念は存在していない（むしろクロムメッキされているほうが高級グレード）ので、気分（あるいは手抜き）によるものと推測されます。

ちなみに、これはVW Poloもそうですが、Cピラー基部にある円形の部分はエア・インレットであり、フューエルリッドではないことに注意してください。