1964年12月にVWグループに加わったAuto Unionが、戦後では初めて"Audi"のブランド名を用いるクルマとして世に送り出したのがAudi 72です。発表は1965年の"IAA Frankfurt"。基本的には前身であるDKW F102のスキンチェンジ版でしたが、DKW伝統の3シリンダー/2ストロークからDaimler-Benz製1,695CC、53kW/72PSの4シリンダー/4ストロークエンジンに換装しています。

Audi 72で従来の2ストロークエンジンからの脱却に成功したAuto Unionは、続けてAudi 80、Super90、60、75を発売しますが、これらはエンジン出力違いのバリエーションであり、総じて"Audi F103"系列と呼称されます。なお、"Audi"に続く数字は、この時点では単純に"Pferdestärke"(馬力)を示すものに過ぎず、のちに登場するAudi 80や100のようにその車種の属するセグメントまでを表象するものではないことに注意してください。ここでのAudi 80はのちに登場するAudi 80(B1)の直接の祖先には当たりません。

Variantに続いてLimousine、いわゆる3ボックス形状のAudi 60も、Herpa"MAGIC"シリーズでラインアップされました。"MAGIC"シリーズは部品点数も少ないですしディテール表現も塗りに頼るところが多いのですが、1970年代のクルマを味わい深くミニカーとして再現することに成功しているように思えます。