Sport quattroの出力強化版として1985年よりWRCのGruppe Bに投入されたのがSport quattro S1です。当初は従来のSport quattroに近い外見をしていたのですが、同年の"RAC Rally"(Royal Automobile Club Rally)以降、空力特性を考慮しフルカウリング化。ボディ後半の冷却系拡大により、もはや原型をとどめているとはいい難い、こどもの工作のような格好へと変貌するに至りました。

このミニカーは箱書きが示すとおり、1987年の"PPIHC"(Pikes Peak International Hill Climb)に優勝したときのクルマをモデルとしたもの。ドライバーはお馴染みWalter Röhrl。Sparkの手によるAudi別注品で、お世辞にも格好いいとはいえないスタイリングを見事に再現しています。マーキングの緻密さも相まってもはやこれ以上の大スケール・ミニカーは必要ないのではないか、とさえ思わせる仕上がりとなっています。

そしてこちらは、上のとおなじ車両の25年後の姿をミニカー化したもの。どうやらAudiでは、90回目を数える2012年の"PPIHC"において動態保存されているこのクルマをエキシビション走行させる企画を用意していたようです。もちろん、操るのは65歳を迎えてなお衰えを知らないWalter Röhrlという夢のような組み合わせで。ところが、この企画は直前になってキャンセルされてしまった模様。RöhrlとS1による走行展示は、2013年に開催された"Roßfeldrennen"というヒストリックカーイベントにおいてようやく実現することになります。ゼッケンに見立てられた"25"という数字はもちろん1987年から25年が経過したことを示す洒落ですが、これはあくまで"PPIHC"用だったようで、"Roßfeldrennen"でのデモ走行時には装着されていません。