1985年、WRCではGruppe Bの年間生産台数200台以上というレギュレーションを10台と大幅に緩和した"Gruppe S"の創設を決定します。これを受け、Audiでは優位性を維持するため比較的低速な緩カーブでコントロールに難があったフロントエンジン・レイアウトを捨て、ミッドシップ車両の試作に着手。作られたのが俗に"Sport quattro RS 002"と呼ばれるこのクルマです。ところが、1986年に発生した重大事故のためGruppe Bは廃止、同時に"Gruppe S"も消滅してしまいプロジェクトは頓挫。この車両はいちども実戦に投入されることなく博物館行きとなってしまいました。

じつは、以上のような経緯のため、このクルマには正式名称が存在していません。先にも述べたように一般的には"Sport quattro RS 002"と呼ばれるようですが、ミニカーの箱書きでは"Rallye quattro Gruppe S"とされています。ミッドシップ化されている時点で"Sport quattro"でも"Rallye quattro"でもないと思いますが。実車を所蔵するIngolstadtのAudi Forumによれば"Audi Gruppe S Mittelmotor Rallyesport"なのだそうです。さすがに本家本元がおっしゃるだけあって、この表現がいちばん適切なのではないかという気がします。

この出自を調べるだけでもひと苦労な車両を1:87スケールでミニカー化したのは、Audiのプロトタイプを専門とする見事な変態メーカー、JB Modellautos。もはや"vier Ringe"でしかAudiであることを確認できない、実用一辺倒のプロトタイプならではのスタイリングを再現しています。ライセンスプレートが"IN-YV 71"であることから、Audi Forum所蔵の実車を取材して製作した模様。