歴代Golfの中でも、ベースモデルとは大きくかけ離れた外見を持つ点では突出した知名度を誇るバリエーションのひとつがこの"Golf Country"。専用設計ではない普通の乗用車にSUV風の味つけをしたもので、近年の"Cross"シリーズにも通ずるコンセプトですが、正確には"Golf Syncro"をベースとしているので、駆動方式はビスカスカップリングを用いた4輪駆動("Syncro")であり、走破性を高めるために最低地上高を180mmとしたり、鋼管製のサブフレームやエンジンアンダーガードを追加装備させるなどといった本格的な改変が加えられています。生産を担当したのはGrazのSteyr-Daimler-Puch社。いったんは"Golf Syncro"として完成させた車両をGrazに搬入し、そこで必要な変更を加えて"Country"にする、という方式で製作されました。立派なカタログモデルで、無印"Country"の生産台数は6,697台。特別仕様の"Allround"が160台、"Chromedition"が558台。これらの他にVolkswagen従業員向け専用の" Worfsburg Edition"というのもあったようです。こちらの生産台数はわずか50台。

この、知るひとぞ知るGolfを1:87スケールでミニカー化したのは、またしても"PCX87"。隙間狙いを基本とするこのブランドとしては、面目躍如な車種選択だったのではありますまいか。さすがに実車の登場から30年以上が経過した2022年になって企画された商品だけあって、形状そのものが忠実に再現されているだけでなく、実車の仕様についてもある程度反映されたものとなっています。ただ、白のボディカラーは当時もののカタログからは発見できませんでした。残りの4色は紛れもなく実車に設定のあった色ですのに。謎です。とくに凄いのは、特別仕様車である"Country Chromedition"を意識したSchwarzで、ガード類へのメッキ処理だけでなく、Hellbeigeの革内装や、この特別仕様にしか装着されない15インチホイールの形状までも再現するという徹底ぶり。製品番号から推察するに"PCX87"の親会社である"Model Car World"の専売品の模様。それで力が入っているのですね