Golf第2世代には、"GTI"のほかにふたつの明白に外観が標準とは異なるバリエーションが存在したことが知られていますが、ひとつめがこの"Rallye Golf"です。もともとVolkswagen MotorsportsはWorld Rally Championship(WRC) Gruppe Aに第2世代Golfをベースとした車両で参戦していましたが、戦闘力をより高めるために計画されたのがこの車両。ホモロゲーション(参加資格)を満たすために5,000台が1989-1991年にかけて生産・一般販売されました。出自としてはAudiのSport quattroのそれとよく似ています。「R」が指し示す意味こそ異なるものの、3代目Golfの"VR6"、5代目Golfの"R32"、そして現在の"R-Line"へと、コンセプトそのものは連綿と引き継がれています。

角型異形のヘッドライト、ボディ同色のフロントグリル、大型でこれまたボディ同色のフロントバンパーガード、左右に大きく膨らんだ前後のブリスターフェンダーなど、外見が通常のGolfからかけ離れていることは、ミニカーからもはっきりわかります。エンジンは1,763cc、118kW/160PSに"G-Lader"(Gラーダー)と呼ばれるスーパーチャージャーが付属したものを搭載、"syncro"システムによる4輪駆動となっています。ABSは標準装備、足回りはスポーツサスペンション、6J*15のアルミホイールに205/15R15タイヤを装着。3枚ドアのみで、シートやラジオなどは選べたもののそれ以外はほぼ固定仕様。50台だけではあるもののレザー内装の個体も存在したようです。なお、エンジンルームの空きスペースの関係からか、エアコンは搭載されていません。

1:87スケール・ミニカーは2020年に市場参入を果たした"PCX87"ブランドのもの。後発ですのでいままで、他のミニカーメーカーが作ってこなかった車種に着目するのはわかるのですが、敢えてこのクルマを選んでくるあたり(現在までの)Volkswagenに対する理解度が高すぎてただただ感嘆するばかり。まさか現実に1:87スケールでお目にかかる日が来ようとは思いすらしませんでした。品質的にも、2021年現在ほぼ最高レベルのクオリティ。むこう半世紀くらいは同一車種で勝負しようというメーカーは現れないのではありますまいか。ボディカラーについても、Verkehrsweiß以外は実車のそれに準拠しているという徹底ぶりです。それにつけてもわからないのはそのVerkehrsweißで、これ、どうやらどこかの特注品らしいのですが、なぜわざわざ実車には存在しない色を選んだのか、そのへんの理解に苦しみます(残っているのはほぼ黒メタリックのGraphit(LB7V)のみ)。本来がラリーの参加車両であったことを考えると、白というのはさもありそうな色ではあるのですが。