"Deutsche Bundeswehr"(ドイツ連邦軍)で使用される最大積載量500キロまでの軽車両、すなわち「ジープ」系列はどれも形状が似ているのでいまいち区別がしづらいですが、これはVWのIltis、れっきとした水冷VW車です。Typ181"Thing"とは違うのかって？あれはKäferベースの空冷VW。DKW Mungaとも違いますので念のため。おなじように見えるのは、どのクルマも大先輩であるVW82"Kübelwagen"の「バケツ」のようなデザインモチーフをそれとなく踏襲しているためと思われます。Typコード上はTyp183となっておりますので、Typ181"Thing"がKäferをベースにするのとおなじようにGolfベースであると思われがちですが、車台、エンジンともベースはAudi。どちらかというと"Thing"よりはDKW Mungaのほうの流れを汲んでいるのですね。いずれにせよ、VW初の本格的な四輪駆動車であったことに歴史上変わりはないわけですが。

このクルマの開発・テストはじつはIngolstadt(Audi)で行われています。テスト主任であったJörg Bensingerの「この四輪駆動システムを乗用車に載せたら」という発想が、当時のAudiの技術責任者であるFerdinand Piëchに受け入れられAudi quattro（Ur quattro)の誕生に繋がっていくのはかなり有名なエピソード。そうした点ではVW、Audi双方で重要な役どころを演じたクルマですが、軍用車両としてはあまり成功作とはいえずわずか3年余りしか生産されませんでした。ちなみに「ジープ」としての後継車はMercedes G-Klasseの軍用版である"Wolf"。

この、ある意味レアな水冷VW車をミニカー化しているのはRoco。1:87スケールの軍用車両に関してRocoは寡占状態にありますので、喜んでラインアップに追加したものと思われます。過去にはデザート仕様、THW仕様、消防仕様などのボディカラー違いが多数存在したようなのですが、現状入手が可能となっているのは"Minitanks"ブランドの公用/軍用車両のみ。Rocoの製品はなかばプラモデル的な世界に足を突っ込んでおりますので、幌やスペアタイヤをはじめとするアクセサリー類が別パーツで付属します。