Typ1 "Käfer"依存からの脱却を目指した新型車の開発は既に1950年台後半から行われていました。その結果としてTyp3、Typ4が登場したのですが芳しい実績を挙げることができず、次第に「ポスト・ビートル」から脱リアエンジン/リアドライブという方向性へと変化していくことになります。Typ3後継ではフロントエンジン横置き前輪駆動のEA272が開発されますが、Kurt Lotzに代わって1971年10月からVWの最高責任者となったAudi帰りのRudolf Leidingが、発表直前だった初代Audi 80のコンポーネントを可能な限り流用して新型車とする開発計画を立ち上げます。これがEA400、すなわち初代Passatです。スタイリングはEA272と同様ItaldesignのGiorgio Giugiaro。名前はずばりドイツ語で「貿易風」。

1973年5月発表、6月発売のPassatは3ドア/5ドアの"Fließheck"(ファストバック)形状であることがAudi 80との相違点で、前半分のボディパーツはすべて共用。当然エンジンは縦置きで、1,296ccの40kW/55PSと1,471ccの55kW/75PS、63kW/85PS。1973年10月にはVariantが追加、1976年12月には1,000,000台生産を達成することになります。

Passatには4種のグレードがあり、それはヘッドライト形状で見分けることが可能になっています。Wiking製のミニカーは3ドアで、ヘッドライトが角型であることから"L"または"LS"の実車をモデル化しているものと思われます。リアドアが大型化していることから、イヤーモデルはおそらく1975年以降。フロント部が黒のシール貼りかモールドかの違いは単純にミニカーの造作が1976年からあらためられたことによるもの。なお、初代Passatは1977年8月にフェイスリフト(適用は1978年モデル以降)が行われているのですが、1:87スケールのミニカーではその存在が確認されていません。(追記：2021年になってようやく後期型の1:87ミニカーがPCX87よりリリースされました。)

最下段の"Polizei Hannover"は、警察関係車両だけをWikingの旧金型ミニカーで再現している"Polizei Edition"が2012年5月に出した1台。じつはこの"Polizei Edition"、"Interessengemeinschaft T2"(ドイツ・T2バスクラブ)のAlexander Prinz氏が「クラブ特注ミニカー」製作のノウハウを活用して興した別ブランドで、かつそのAlexander Prinz氏こそがドイツでのミニカー調達代理人であるという、当サイトにとってはたいへん縁の深いもの。そのようなわけで、通常パトカー仕様のような「ルーフ追加構造物もの」は展示の対象外としているのですが、この1台に関しては例外とさせていただいております。