Volkswagen AGと中国の上海汽車との合弁企業である、上海大衆汽車有限公司(Shanghai-VW)が2000年に発表したのがこのクルマ。"Shanghai Passat"と呼ばれます。中国の国内市場向けに特化した「ご当地車種」で、リムジン的な性格を強調するためホイールベースを100mm延長、そのほとんどを後部座席の居住性向上に割り当てています。それ以外は内外装ともにオリジナルのPassatと違いはありませんが、トランクリッドのエンブレムは上部向かって左側が"上海大衆"、右側が"PASSAT"で、排気量表示は右側下部に移動しています。以降、上海大衆において"B5"Passatは"Passat Lingyu"として独自発展を続けることに。

Volkswagen do Brasil Ltda.の"Gol"、Volkswagen of South Africa Ltd.の"Citi Golf"に代表されるVWの販売地域限定型のローカル車種は、いままでミニカー化の対象とされることがありませんでしたが、中国では2000年頃から上海大衆、一汽大衆(FAW-Volkswagen)製車両が1:18、1:24、1:43などのスケールでミニカー化されるようになってきています。近代化が急激に進んでいるかの国では、自動車そのものの生産技術だけでなくマーケティングやプロモーションの手法に関しても本家から吸収しようとする意欲が旺盛なのでしょう。

この"Shanghai Passat"はその中のひとつで、上海大衆の別注品。1990年代からミニカーの生産はそのほとんどが中国で行われており、ノウハウを蓄積している工場も多いため、発注先にはこと欠かなかったものと思われます。ただ、ドイツとは商慣習が異なるせいか製造元の記載はどこにもありません。ミニカーとしては既存のAWM製、Herpa製などをコピーしてお茶を濁すことが可能だったにもかかわらずまったくのオリジナル。ボディパネルとウインドウの段差を出来るだけ小さくするために窓のクリアパーツをピラーの厚み分彫り込んだり、ダッシュボードとシートのパーツを分割して色替えを実現するなど、妙に凝った作りになっています。全体的な仕上がりはAWM以上、Rietze以下といった感じ。