初代Sciroccoは1981年2月で生産を終了、翌月の"Salon International de l'Auto"にて一般公開された2代目にバトンタッチします。2代目Sciroccoではプラットフォームこそ先代のものを継続して使用するものの、上屋はまったくの新規構築。スタイリングはGiorgio Giugiaroではなく、VW社内のデザインセンターの手によるもので、Golfとの差別化のためにスペシャリティクーペ的な色彩をより強く帯びたものとなっています。面構成も時代に適合した曲面基調の柔らかなラインに変化。ボディサイズは4,210*1,645*1,305と、先代の3,880*1,625*1,310からわずかに大きくなり、その差分は主に後部座席の居住性向上とラゲッジスペースの拡大に充てられています。生産は先代同様Wilhelm Karmann GmbHのOsnabrück工場で、291,497台が1992年9月の生産終了までに送り出されました。初代Sciroccoの504,153台と比較するとモデルライフが長かった割に台数が奮いませんが、これをスタイリングの不評によるものとするのはあまりに短絡的な気がします。スペシャリティ化の進行による価格の上昇、プラットフォームの陳腐化、後継車扱いのCorradoの登場など、複合的な要因によるものと考えるのが妥当でしょう。

1980年代の「ふつうのクルマ」は意外とミニカー化率が低く、2代目SciroccoもConrad製の1:43が唯一の存在という状況がなかり長い間続いたのですが(注：少量生産品ではBS-design製の1:87レジンキットもあります)、「Sciroccoの再来」を謳う"IROC"の出現以降、再評価の動きがミニカー業界でも広がっているようで、いくつかの製品がリリースされるようになってきています。このNorev製1:87ミニカーもその中のひとつで、2009年の新商品。どのメーカーもいままで手をつけたことのない車種なだけに完全な新規金型と思われるのですが、造作はあまりよろしくなく同社の前作Foxよりかなり劣ります。作りまで1980年代のそれに合わせたとでもいうのでしょうか。そのくせウインドウ回りのラバー部、ドアミラー、ドアグリップを黒く色差しして雰囲気を作ったり、リアウインドウ基部の"SCIROCCO"ステンシルとリアエンブレム部をタンポ印刷で再現するなど、力加減が微妙に噛み合っていません。

ワンアームワイパーを装備することからミニカー化の際にモデルとされたのは1981年あるいは1982年モデル、リアエンブレムからグレードは"GT"、フロントバンパーにヘッドライトウオッシャーの噴出口がありますので、ふんだんにオプションを装備したクルマであろうと思われます。