こちらはVolkswagen Sachsen GmbHが自社の従業員向けに制作したミニカーのセット。よく見られるメディア向けの特注品とは異なりあくまで内部向けのため、深い含みを感じさせるものとなっています。表向きはVWグループの新たなモジュラーコンセプト"MQB"を採用したGolf(A7)とGolf Variant(A7)の2台セットなのですが、ディスプレイケースには3台分のスペースがあって、台座に"2014"とプリントされた右端のスペースは空席となっています。透明カバーの内側にセットされた緩衝材の形状から察するに(右端部分にはミニカーを保持するための「押さえ」がない)、どうやらこれは欠品などではなくはじめから2台セットであると考えるのが妥当なようです。それではなぜかれらはこのような奇妙なセットを作ったのでしょうか？

「空席の謎」を解明する前に、Volkswagen Sachsen GmbHについて少し触れておきましょう。Volkswagen Sachsen GmbHは旧東ドイツ地域にある工場群を束ねるVWAGのグループ企業で、Zwickauに組立工場、Chemnitzにエンジン工場を持っています。この、Zwickauにある自動車組立工場(日本ではなぜか「モーゼル工場」と呼ばれることが多い)というのが、もともとはAuto Unionの工場だったのが第二次世界大戦後にVEB SachsenringのものとなってTrabantなどを生産していた場所で、現在はGolf(A2以降)、Passat(B5以降/セダンのみ)を生産しています。

話題をセットに戻します。もういちど、「Volkswagen Sachsen GmbHが作った」ものであるということを念頭に置いて考え直してみますと、台座にプリントされた西暦が単なるそのクルマの「発表年」ではなく、「Zwuckau工場で生産開始された年」であることがわかってきます。と、いうことは。"2014"が空席なのは、「2014年にも新たに生産を始める意思が(かれらには)ある」あるいは「2014年に生産開始する予定が既にある」ことを暗示していることにはならないでしょうか。もし、そうだとすれば、"2014"を埋めるのは新型Passat(Passatも"MQB"ファミリー)になることは容易に見当がつこうというものです。

そして、おおかたの予想を裏切ることなく、2014年には台座の空きスペースを埋めるPassat Variantのミニカーが登場することとなりました。